生姜道
◉生姜道三カ条
・生命の種を育てる
・自然の摂理を受け入れる
・自然を味方につける
1、生命の種を育てる
生姜はそれ自体が種になります。生きている生姜は、春に土に戻すと再び芽吹き、分けつを繰り返しながら新しい命の種が育ちます。私は、この種になる生姜が市場にほとんど流通していないことが残念でなりません。私たちは、食物の命の時間で出来ています。ヒトも、哺乳類も、昆虫も、微生物も、植物も、山も海もそれらすべては命の種で巡っているのです。
2、自然の摂理を受け入れる
生姜は積算温度で発芽が行われます。初めに発芽した茎を一次茎といい、一次茎はほぼ親の力で育ちます。一次茎が順調に育ち、根を張り自走し始めた頃、親生姜(種生姜)と一次茎が二次茎を育て、三次茎、四次茎と生姜は分けつを繰り返して大きくなります。路地栽培では季節の移り変わりだけでなく、毎年変わる気候変動を受け入れるしかありません。その上で、柔軟にかつ、先手となる対策を行うことが求められます。自然の摂理を受け入れて尚、丁寧に面倒を見てあげることで、土地の気候風土に沿った風味豊かな美味しい生姜が育ちます。大きくても小さくても、それが育つ環境の中で病気になることなく、しっかり時間をかけて育ち切った生姜はとても美しく、美味しい生姜に育ちます。私は、「美味しい」という言葉に「美しい」の文字が入っていることに心ときめきます。美味しいものは美しく、美しいものは美味しいのです。
3、自然界の機能を味方につける
自然栽培で生姜を育てていると、植物の知的さに本当に驚かされます。自然は必ずしも生姜の都合に合わせて動いてはくれません。ですので、私達が自然を生姜の味方につけるように動くのです。自然栽培では、広大な自然のバイオリズム(歯車)に生姜のバイオリズムに合わせる調整役として私たちは働きます。
生姜もまた、生体を調節する機能を有する機能性食品です。私達は自然界の機能を味方につけることで、より健康で豊かな暮らしに貢献したいと強く願っています。
生姜道とは・・・
私は、生姜の姿、味、香りがとても好きです。世の中で知られている
生姜の多くは、魚の切り身のようなもので、植物としての生姜はそこにはいません。
生姜の国内生産量は約5万トン。そのうち95.5%に農薬と化学肥料が使われています。栽培面積は凡そ香川県一県分に相当します。農薬や化学肥料については様々な考え方がありますが、化学肥料による河川や海の汚染は、これを使い続ける限り当面なくなることはないでしょう。また、農薬による使用者や周辺住民への暴露も現実問題としてあります。それより何より、これらを使い続けることは、花粉の媒介者である昆虫や土中微生物の減少をもたらし、しいては作物が育たない不毛の地へと変えてしまうのです。
私は決してテクノロジーを否定するつもりはありません。しかし、化学資材への依存度が高くなればなるほど、私たちの命は自然からますます離れていってしまう現実を多少なりとも知ってもらいたいと思うのです。