ごあいさつ
はじめまして、i(あい)合同会社代表の榊原留美子と申します。弊社は2012年に「空の下」という屋号でしょうが栽培を始めてから9年間を経て、2021年3月に法人にしました。私がしょうが栽培を始めた2012年の作付け面積は僅か2畝。9コンテナ(144kg)の種しょうがを植えたことが今では懐かしく思い出されます。その年の収穫量は全部で18コンテナ(256kg)だったと思います。倍に増えた、、というかそれしかできなかったんですね。当時の私は、「自然にできただけでよい」と考えていました。まだ農業の「の」の字も知らない都会育ちの私は、とにかく余計なことはしないでしょうがの種を畑に植えた後は土が育ててくれるだけで良いと考えていました。のちに私は「出来ただけでいいとするのは農業ではない」と思うようになるのですが。。。
翌年は、作付け面積を5畝に広げて収穫量は確か1トン弱だったと思います。この年、しょうがが育つ「お世話」を知った私は、飛躍的に収穫量をあげることが出来ました。収穫量を増やすための肥料を入れたわけではなく、ただ、手を入れる回数を増やしたことで、しょうがは以前とは比較にならないほど大きく育ってくれました。それからの数年は、とにかく適期適作に努めました。丁度の時期に生姜を植えて、丁度の時期に除草して、丁度の時期に土入れをする。その繰り返しの中で「丁度」を掴んでいきました。
農業は知ってから出来るようになるまでの距離が大変長い仕事です。頭で理解した事に体が付いてくるまで10年はかかります。更にいうと、なぜそれが「丁度」なのかを知り得るのに10年かかるのです。なぜかといえば、農業は自然を相手に体を使う仕事だからです。そして相手は植物という自分とは異なるバイオリズムで生きる生き物を相手にしているからに他なりません。相手を知り、自分を知って尚、丁度を見計らうことが、まずは一番大切な農業スキルで、これは子供でも大人でも出来る仕事ですが、誰にでも出来る仕事ではありません。
話を戻して、次の段階に進みたくなった私は、個人として積み上げてきたものを後世に引き継ぐ手段として法人に移行することを決めました。 今も昔も農業は家族経営が圧倒的に多く、そのスタイルが最も良いと考える人たちも多くいます。しかし、一方で家族経営が続かず、農業が途絶える現実は加速しています。私自身、シングルマザーという立場で農業を行う中で、農業への想いを後世に広がりを持って繋げるには、個人の枠を超え法人化する方がいいと考えていました。奇しくも設立日が3月11日だったことは、偶然とはいえ感慨深いものでもありました。なぜなら、私がこの高知県中土佐町に移り住んだきっかけが、2011年3月11日に起きた東日本大震災だったからです。この話はここでは割愛したいと思います。
会社を設立した後の一年は、それ以前にも増して人の出入りが盛んになり、また、メディアでも取り上げて頂く機会も増えました。私が想い描く未来にに少しづつですが近づいているように思います。「SORANOSITA」は、アレやコレやとカテゴライズされて分断され孤独を感じたり、自分だけが違っているように思い寂しくなったり、会いたい人と会えなかったり、理不尽な差別や区別が当たり前にある日々の暮らしの中で、「みんな空の下の住民だよね」と思えれば、自然に広がる意識の中で、この地球に生きる生き物として目指す世界が見えてくるのではないか・・・・そんな想いでつけた名前です。空の下は目の前にもあるし、はるか遠く何処までも続く世界です。私たちは、その土地の景色や香り、色や質感を大切に、皆様の命輝く暮らしのお役に立てることを心から願い、まだまだ道半ばではありますが、日々の農業に勤しんでいます。
2024年2月、空の下合同会社は「i合同会社」に社名を変更しました。「i(虚数)」は二乗してマイナスになる数です。イマジナリーナンバーといわれ、人類は未だその実態を知ることは出来ないけれど、i があることで答えを導き出せない方程式の答えが導き出せるようになりました。そして、今は飛行機の翼の設計や体重計の体脂肪率の測定など、様々なものにiの概念が活用されています。また科学の発展に不可欠な i(アイ)と日本語の愛(あい)とが同じ音であることも、これを社名としてこの仕事に一生涯をかけるにふさわしい名だと思いました。私たちは、未だ確立されていない自然栽培で美味しいしょうがを育てるところから、i 愛の世界を創り上げていこうと思います。今後とも i 合同会社をどうぞ宜しくお願いします。
2024年2月29日
i 合同会社
代表 榊原留美子